目標設定・被評価者研修の実施ポイント
人事評価における目標設定は制度をうまく運用できるかどうかの大きな鍵となります。公平で適正な人事評価を行うためには、評価者だけでなく、評価される社員も正しく目的やルールを理解し、水準を合わせることが重要です。適切な目標を設定することは納得性の高い評価を実現する第一歩となります。
目標設定と被評価者研修
目標管理制度の成果が上がらない理由
- 事業計画、部門計画と個人の目標が連動していない
- 職種、職位に合った目標が設定されていない
- 目標が抽象的で具体的になっていない
- 目標達成より評価を意識した低い目標設定になっている
目標設定のステップ
(1)方針の共有
経営方針や全社目標を共有し、個人の目標設定に必要な情報を共有します。
(2)目標の自己設定
全社目標を事業部門から個人の業務に落とし込み、目標を自己設定します。
(3)目標の確認
自己設定した個人目標の具体性や難易度を上司とすり合わせます。
(4)目標の承認
上司や承認者が目標を承認して、社員と会社の目標が一致したことになります。
目標設定のポイント
(1)組織目標と個人目標を連動させる
全社目標があって、次に組織目標、その次に個人目標があります。個人目標は組織目標に貢献し、組織目標は全社目標に貢献します。
(2)職種、職位ごとに別々の目標を設定する
職種別、職位別のレベルに合ったふさわしい目標を設定することで、期待する社員の能力・行動を最大限に引き出し、組織の成果を最大化することができます。
(3)目標設定研修を実施する
目標設定の意義と手順を理解することで、社員は自分の役割を自覚し、前向きな意欲が高まります。管理職のマネジメント力を向上させる効果もあります。
(4)評価の分析と目標の見直しをする
プロセスと成果の相関を分析し、あまり相関関係が見られない、意図した行動が伴わない場合は、目標の見直しが必要です。合格レベルに達している場合にも見直しを行います。
被評価者研修の実施
研修の目的
- 人事評価の目的を理解すること
- 経営理念、全社方針を再確認すること
- 評価基準、ルールを共有すること
目標設定研修
- 目標設定をするために必要な情報、指針を提示します。
- 被評価者が(行動)目標を自己設定してみます。
- グループなどで目標を添削して、気づいたことや修正ポイントを発表します。
目標の確認ポイント
- 具体的になっているか。
- 心構えや意欲ではなく、行動になっているか。
- 定量的で測定できるか。
- 現実的で適切な難易度になっているか。
- 社員と会社の目標がリンクしているか。
【悪い例】「新サービスの企画を通し、3ヵ月後までに販売を開始できるよう努力する。」
この目標には、具体的に何をするかが表現されていません。より具体的な目標とするためには、行動や数値を入れて、下記のようにすることが考えられます。
【良い例】「3ヵ月後までに新サービスの販売を開始するために、毎週、企画案を2つ以上出し、上司および企画メンバーの意見をもらう。」
SMART(スマート)の法則でチェック
目標設定には以下の頭文字をとったSMARTの法則があります。法則を使って、目標の内容を確認してみましょう。
S pecific | = | 具体的になっているか? |
M easurable | = | 測定できるか?定量的か? |
A greed upon | = | 同意・納得しているか? |
R ealistic | = | 現実的で努力すれば達成できるか? |
T imely | = | 期限が明確になっているか? |
まとめ
目標管理制度では社員の自主性を引き出し、仕事のなかで実践的な能力開発を行います。社員の日々の行動が変わり、習慣化されることで、人材育成と業績向上をともに促進していきます。最初から全員がスムーズに目標を設定できることはないでしょう。目標設定にもトレーニングが必要です。繰り返しているうちに精度が上がっていきます。
評価を受ける社員が自分の仕事や役割の意義と期待を正しく理解することは、モチベーションを高め、前向きなやる気を引き出すことに効果があります。評価者の負担を減らすことにもつながりますので、評価サイクルがスムーズに進みます。
目標管理制度は社員一人ひとりが自主性を発揮して、能力を最大化するためのマネジメント方法です。